東郷隆 2019年6月5日03時00分
市民グループは、翻訳者で作る「プロジェクト・ゲン」。漫画は同グループや海外の翻訳者らによって英語やロシア語、スペイン語、ブラジル語など24言語に翻訳され、全巻が出版されたのは10言語だという。
アラビア語版は広島大で博士号を取得したカイロ大のマーヒル・エルシリビーニー教授(59)が訳し、2018年から今年6月までにエジプトの出版社が全10巻のうち6巻を刊行した。
ログイン前の続きマーヒルさんによると、初めてゲンを読んだのは12年ごろ。被爆証言集を翻訳して出版していたが、文字だけでは何が起きたか想像することは難しかった。日本人の友人の薦めでゲンを読んで「とても分かりやすく原爆について描かれている」と驚き、翻訳を思い立った。

この苦境を原作者の故・中沢啓治さんの妻ミサヨさん(76)=埼玉県所沢市=が知った。「主人がゲンに込めた被爆者の怒りや悲しみを多くの国の人に届けたい」と、Tシャツを作り、売り上げで出版社を支援することを発案。昨夏、広島市の知人らに依頼し、漫画のコマなどをあしらったデザインのTシャツがこのほど完成した。
マーヒルさんは「アラブは日本との距離も遠く、核兵器の恐ろしさを知らない人が多い。ゲンを通して恐ろしさを知り、もっと積極的に世界の国々と一緒に核兵器廃絶を呼びかけるようになって欲しい。平和を広げるため、ご協力をお願いしたい」と話している。
Tシャツの問い合わせは広島市中区のディスクショップ「ミザリー」(水曜定休、082・241・0782)へ。(東郷隆)